ADHDは「受け入れること」と「克服すること」のバランスが大切です

こんにちは!

カウンセリングルームすのわ・臨床心理士の南です。

今回の記事では、ADHD当事者が

『自分の苦手』について、『ADHDの脳の特性として受け入れること』と『克服するために頑張る』ことのバランスをとることの大切さ

についてお伝えします。

これまでの記事でADHDの症状と改善策を紹介してきました。

『ADHDの正しい対策は?何もしないと別の問題に繋がります!』

『ADHDの多動性・衝動性とは?欠点を強みに変えるコツ教えます!』

ADHDの当事者の方の中には、自分自身の特性(症状)を学ぶことや、改善策に取り組んできた人も多いと思います。

それなのに、『あれ?なんか周りとうまく分かり合えないな』と感じることや、『こんなに頑張っているのに、効果も感じられないし、疲れた…』と思ってしまうことはありませんか?

今回の記事ではそんな時のための役立つヒントをお伝えしていきます。

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この記事を読んで欲しい人はこんな人

・家族や職場の人から『努力がみられない』と非難されがちなADHDの当事者の方

・『苦手を克服しようと頑張って疲れた』、『なかなか効果がでない』というADHD当事者の方

『受容と改善のバランス』という視点

これを読んでいるあなたは、仕事や日常生活のなかで、『自分の苦手なこと』に直面し、『何かしらの対処』をしたものの、『どこか、しっくりきていない』感じがあるのではないでしょうか?

冒頭でもお伝えしたように、家族や職場の人から『努力がみられない』と非難されてしまったり、『苦手を克服しようと頑張って疲れた』、『なかなか効果がでない』と悩んでしまったり。

そんなときに、自分の中で見つめてほしい点が、自分の苦手なこと』に対してADHDを脳の特性として理解して受け入れること、つまり『受容』と、改善・克服するために頑張ること、つまり『改善』のバランスです。

受容とはADHDという脳の特性を理解し納得すること

 ここで言う“受容”とは、『ADHDの特性は、自分の脳の特徴からきているものだと納得すること』を意味しています。『ADHDの特性を無くそう・変えようとする』とは反対のベクトルというイメージです。

 具体的な“受容”のイメージは、『自分の特性に合う職場を選ぶ(合わない職場から離れる)』『得意なことをする(苦手なことはしない)』といったことです。

 たとえば、ラーメン屋さんのアルバイトをしているKさん(23歳)の場合。

ホールスタッフとしてレジをしますが、“打ち間違え”や“お釣りの数え間違い”といったミスが続発してしまいます。上司から毎回怒られますが、『自分は事務作業が苦手だというADHDの特性をもっているから…』と心の中で納得し、上司には『自分はレジが苦手だから配膳だけやらせてくれ』と主張し、ミスへの対策は考えてきませんでした。その結果、店長からは『怒られているのに、開き直って直そうとしていない!』と更に叱責されてしまいます。

 このKさんの場合、レジ作業のミス(自分の苦手なこと)について、『ADHDの特性のひとつ。これは自分の脳の特徴からきているんだ』と納得し、”受容”しているようです。

ここでの受容によるメリットは、Kさんが、『自分が劣っているから怒られるんだ、自分が悪いんだ』と必要以上に自分を追い詰めないで済むことです。

 “受容”には、こうしたメリットがある一方で、“受容”に偏りすぎることで、周りの人からみると『何も努力していない』という誤解が生じてしまうというデメリットがあります。

改善とはADHDの特性をなくそうと努力すること

 では、“改善”とはどういうことでしょうか。ここで言う“改善”とは、『ADHDの特性を、なんとか無くそう、変えよう』と努力することを意味します。先ほどの“受容”とは、『ADHDの特性を自分のものとして納得しきれていない』という点で違いがあります。

 具体的な“改善”のイメージは、『自己啓発やハウツーの本をたくさん買って読む』『服薬や、カウンセリングに通う』といったことです。

たとえば、パートナーと暮らすMさん(19歳)の場合。

自分の部屋がありますが、大事なものと捨ててもいいものが混ざって床に散らばり、机の上も書類の山。パートナーの物が混じっている場合もあるので、たびたびパートナーから『部屋を片付けて』と言われます。

Mさんは、『苦手な片づけを克服しなければ』と思い、“片づけのコツ”などの本をたくさん買って読み、自分の力で対処しようと試みます。しかし、『完璧にキレイにしたいのに、できない』と途中で挫折してしまうことや、キレイになっても疲れ切って続かないことが多くあります。

 このMさんの場合、片づけ(苦手なこと)について、『ADHDの特性とは知っているが、それでも何とか自力で克服したい』と“改善”しているようです。

これによるメリットは、『自分で自分の苦手なことをコントロールできる』という自信が保てるということがあるでしょう。

 しかし、“改善”とは、ある意味『キリがない』部分があるため(ハウツー本は限りなく出るし、ADHDの脳の特性があるため改善にも限界がある)、“改善”に偏りすぎると、『自分自身が疲れてしまう』という大きなデメリットがあります。

受容と改善のバランスをとることが大切

 “受容”と“改善”について、それぞれメリットはあるものの、“受容”に偏りすぎると『周りの人から、何も努力していない、と誤解される』、“改善”に偏りすぎると、『自分自身が疲れてしまう』というデメリットがあることをお伝えしました。

“受容”も“改善”も、必要で大事なアクションです。しかし、どちらかに偏りすぎないこと、つまり『バランスをとること』が大切なのですね。

ここでの『バランスをとる』って、どんなイメージでしょうか。

私は、

受容と改善のバランス

    ||

『苦手なこと』に対して、『自分のADHDとしてのどういう特性が影響しているかを冷静に見極めつつ(受容)、周りの助けも借りながら適度に努力する(改善)こと』

だと思っています。

この“適度”がミソです!

時として“カンペキ”なゴールを目指してしまいがちですが、『ADHDの特性にマッチしたゴール』を設定することで、おのずと『頑張りすぎる』というトラブルを防ぐ(適度な努力を続ける)ことができます。

これを踏まえて、先ほどのラーメン屋バイトのKさんに提案しましょう!

Kさん、自分の“ミスしやすい時“を分析して(受容)、上司に『店が混雑しているときは焦ってミスをしやすいので、レジ打ちは比較的空いている時間帯にがんばりたい』と伝える(改善)のはどうでしょうか。Kさんは、”改善“を加えたことで、『空いている時間でミスのないレジ打ちをする』というゴールに向かって、自分から働きやすい場をつくることができます。またミスのないレジ打ちのために、一日の終わりにミスが起こった状況をノートに書いて分析して、明日からの反省をするという”改善“もできます。

次に、パートナーと住むMさんに提案です!

Mさん、パートナーに『自分は物のカテゴリー分けが苦手だから(受容)、いくつかのカテゴリーごとの入れ物を用意してほしい』と頼み、自分はパートナーに用意してもらった入れ物に、日々の書類や物を入れておく(改善)のはどうでしょう。

Mさんは、“受容”することによって『雑誌に出てくるような整然とした部屋作り』から、『無理なく、大ざっぱな分類を続けること』にゴールが変わり、適度に頑張りつづけられますよ。

まとめ

 いかがでしょうか。何か思い当たる部分がありましたか?

今回は、ADHD当事者が『自分の苦手なこと』について、『ADHDの特性として受け入れる』ことと『克服するために頑張る』ことのバランスについてお伝えしてきました。

大事なことは、『一度バランスを見直しても、繰り返し見直しを続けていくこと』です。

どんな時が見直しのポイントか。

それは、冒頭でもお伝えしたように、苦手なことに対して、何かしらの対処をしているのに、自分自身・周りとの関係で『どこか、しっくりきていない』感じがあったときです!

この『どこか、しっくりきていない』感じを、見直しアラームだと捉えましょう!

 そして、いつもお伝えしていますが、『“受容”と“改善”のバランスを見直す』という作業も、ひとりでは難しい時があります。それこそ、自助グループやカウンセリングで『誰かと一緒に考えること』も、ひとつの『バランスをとった行動』かもしれませんね。

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