ADHDに効果的な治療法、認知行動療法とは?
こんにちは!
カウンセリングルームすのわ・臨床心理士の南です。
この記事では当ルームでたいへん多くの方からご相談を頂く「ADHD」への効果的な治療法について、初めて聞く方にも分かりやすくお伝えしていきます。
この記事を読めば、ADHDの認知行動療法について大まかな内容がわかります。
なぜADHDの治療には認知行動療法が必要なのか?
まず認知行動療法とは、カウンセリングの方法の1つです。
ADHDには薬の治療法があります。こちらの記事でも病院にいくメリットとして薬の治療法を上げています。
ADHDかなと思ったら、病院に行こう!パート1 診断を受けるメリット・デメリット
ではなぜADHDの治療として、薬だけでなく認知行動療法が必要なのでしょうか?
その答えは
「薬の治療が合わない人がいる」こと
と
「薬の治療だけでは十分な効果を得ることができない人がいる。」
ことにあります。
薬物療法では2割から5割の人が、副作用が強く続けられなかったり、効果を感じられなかったという研究もあります。
また
薬物療法に効果を感じた人についても、症状は半分は残ってしまうという研究もあります。
中枢刺激薬の対照試験、および、三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、非定型の抗うつ薬のオープントライアルでは、症状が十分に軽減しなかったり、薬物療法に耐えられなかったりしたために、20〜50%の成人が非反応者であった。(Wender、1998;Wilens et al.,2002)、さらに、反応者とみなされた人も、ADHDの中核症状の50%かそれ以下にしか効果がなく、これは児童を対象とした数値よりも低いものであった。
大人のADHDの認知行動療法セラピストガイド サフレン(2011)
実際にすのわのクライアントさんや、ADHD交流会の参加者の話をお聞きしても、薬の副作用が大きすぎて薬物治療を続けることが出来なかった方や、薬は継続して飲んでいるが、効果がイマイチと感じている方が、少なからず存在します。
薬物療法だけでは十分な効果を得ることができない人がいる背景には、薬はADHDの中核症状としての注意の問題、多動性、衝動性には効果はあるけれど、具体的な時間管理や物を無くさない工夫や柔軟な考え方を身につけさせてくれるわけではないことがあると思います。
ADHDの認知行動療法の効果は研究で実証させている
認知行動療法の特徴として、症状の変化を評価した研究がしっかりとされていることにあります。
つまり
ADHDの認知行動療法を行うことで、ADHDの症状の改善、生活の問題度合いの改善、不安と抑うつの改善が研究によって証明されているのです。
薬だけを飲んだグループに比べて、薬と認知行動療法を一緒に行ったグループの方が、症状が軽減しています。
独立評価者と自己評定によって、ADHD症状尺度と併存する不安症状と抑うつ症状を評価した。結果の評価として独立評定者は、CBTに割り当てられた人は、薬物療法のみを継続した人と比較して、ADHD症状と全般的支障度を低く評価した、同様のことが自己評定でも示された。CBT群は他者と自己評定の両方で不安症状が軽減、抑うつ症状も自己評定では同様の効果がみられた。
大人のADHDの認知行動療法セラピストガイド サフレン(2011)
ADHDの認知行動療法では何をするか?
認知行動療法はカウンセリングの1つの方法だとお伝えしましたが、話をただ聞いてもらうカウンセリングのイメージとは大きく違います。
認知行動療法というように、認知的な治療と行動的な治療に分かれます。ADHDの認知行動療法では、初めに行動的な部分を扱います。
行動的な部分としてはADHDの方が苦手とする、順序立て、片付けや注意散漫について、具体的な対処スキルを学びます。
①順序立てと計画性、片付けのしくみ作り
手帳を活用して、優先順位付けを学びます。具体的には手帳やノートを使って、やることリストの使い方を学んで、時間の使い方を学びます。
効果的な問題解決方法を見つけるための方法も学びます。
また片づけの苦手さについても、効果的な片づけのしくみ作りについて学びます。
②注意散漫への対処
集中力の持続を高めるために、環境の調整方法を学びます。注意散漫になる原因を減らして、集中できるための要素を増やします。
タイマーを使って、集中の持続力を高める訓練である注意持続訓練を行います。
すのわのADHDの認知行動療法グループでは、全8回のうち5回を①~②に費やします。
認知的な部分としては
③バランスのとれた考え方を身につける
不安症状と抑うつ症状への対処方法を学びます。
否定的な考え方のクセを見つけて、それをバランスのよいものに変える工夫を学びます。バランスの良い考え方になることで、不安やうつの悪循環から抜け出やすくなったり、先延ばしを減らすことが出来きます。具体的な方法についてはまた、別の記事で紹介します。
ADHDの認知行動療法はどこで受けることが出来るの?
ここまで読んできて、認知行動療法を受けてみたいと思われている方もいるのではないでしょうか?既にカウンセリングを受けられている方は下に紹介している本を担当のカウンセラーに伝えて、一緒にADHDの認知行動療法を行ってもらうことをお勧めします。
これから探したいと考えている方は、カウンセラーを探すときに認知行動療法が受けられるかを確認しておくのがよいでしょう。
ご自身で本を買って、自習することもできますが、自分で継続して課題を解決できるくらいなら、ADHDに困っていないと思いますので、自力のみでの学習はお勧めできません。治療者が近くにいない場合は友人や家族に手伝ってもらうのも良いかもしれません。
カウンセリングルームすのわでは個人カウンセリングでは10回~15回、グループカウンセリングでは8回のプログラムを提供しています。
ご興味持たれた方は、ご連絡下さい。
「成人ADHDの認知行動療法 実行機能障害の治療のために」は全10セッションで構成されています。こちらはセラピスト向けのマニュアルですが、後半はクライアントさんが読んでもわかる内容です。
「大人のADHDの認知行動療法<本人のためのワークブック」は全12セッションで構成されています。別にセラピスト向けのマニュアルがあります。