ADHDの子は休校中のネット/ゲーム依存に注意!ルールを決めて家庭崩壊を防ごう
こんにちは!
足立区北千住カウンセリングルームすのわ・臨床心理士の南です。
この記事では、「ADHDをもつお子さんの保護者が知っておきたい、長期休暇中のゲームやインターネットとの付き合い方、家族ルールの決め方」を紹介しています。
☆この記事を読んで欲しい人はこんな人
■休校中のADHDのお子さんを持つ保護者
■不登校のADHDのお子さんを持つ保護者
■ADHDのお子さんのネット/ゲーム依存に悩む保護者
この記事を書いている3月20日現在、新型コロナウィルス感染拡大防止のために全国的な休校開始から2週間あまりが過ぎました。学校再開をしたところもあるものの、多くはこのまま春休みを迎え、新年度開始まで長期間の休みが続きます。この急な長期休みに、多くの保護者の方が混乱してしまっていることかと思います。
このような状況で多くの出版社や動画サイト、ゲーム企業が無料でコンテンツを提供し、時間を持て余した子どもたちにとっては嬉しい状況と言えるかもしれません。
しかし一方で、以下のような保護者の声も聞かれるようになってきました。
「長い休みの間、一日中ゲームばかりしていて対応に困ってしまう」
「自分で勉強することが苦手なため、長期の休みで学力が落ちてしまわないか心配」
これらはADHDをもつお子さんの保護者から、普段の長期休み中に実際よく聞かれる悩みでもあります。
このような悩みをお持ちの保護者が知っておきたい、「長期休暇中のADHDの子どもがゲーム/インターネットと付き合ううえでの注意点やコツ」についてお伝えしていきます。
ADHDの子どもはゲーム/ネット依存になりやすい
ADHDのお子さんは、脳の傾向として我慢する力(抑制力)に課題があります。そのため自力でのコントロールが難しく、どれだけ生活に支障があってもゲームやネットを一瞬たりとも手放せない、いわゆる依存症になってしまうことが少なくありません。エスカレートすると家族への暴力に及ぶなど、家庭が崩壊するケースさえあります。
特にスマートフォンのゲーム、オンラインゲーム、YouTubeなどは、依存になりやすいコンテンツと言えます。昔からゲームや漫画などの娯楽はありましたが、それらは繰り返すことで、どこかで飽きがくるものでした。私も子どもの頃にはTVゲームにはまり、ドラゴンクエストというゲームをやりこんだ経験もあります。しかし当時のゲームはやりこんでいくと、段々ゲーム内でやることが無くなり、飽きてしまうことが多かったように思います。
しかし今の時代のオンラインゲームでは、次々とゲーム内容が追加されたり、ネットを介して新しい相手との対戦ができたりという刺激があるため、いつまで経っても飽きることがありません。またYouTubeも動画は無数にあり、常に更新もされていて、見るものが尽きるという事態はまず起こらないでしょう。
当ルームのカウンセリングでも、「長期の休みをきっかけとして、ADHDの子どもがゲームばかりやっていて、ゲーム依存になりそうで怖い」という相談も少なくないのが現実です。
2019年にはWHOが「ゲーム障害」という新しい病気を認定したことがニュースとなりましたし、つい先日(2020年3月18日)、香川県が未成年に対しゲーム/ネットを使える時間を制限する条例を可決し、大いに保護者の関心を集めています。
1) ゲームのコントロールができない
2) ゲームを他の何にも増して優先する
3) ゲームにより問題が起きているが、ゲームを続ける、またはさらに増える
ICD-11草稿に記載されているゲーム障害の定義
ゲーム/ネットを一概に子どもへの害悪とするのは少々早計ですが、生活サイクルが乱れるほどの長時間利用が好ましくないという点については、ほぼ異論はないでしょう。
ADHDのお子さんは、他のお子さんよりも特に病的な長時間利用に陥りやすい傾向があるということを踏まえ、家庭での仕組み作りをしていただきたいと思います。
ゲーム/ネット依存やネットのトラブルはルール作りで予防する
現在の新型コロナウィルス感染拡大に伴い、人の集まる場所に行くことの自粛が要請されています。この長期休暇を家に籠りつつ、全くインターネットを使わずに乗り切るのは不可能でしょう。
とは言え、何の制限もなく自由にゲームやネットに接していると、生活習慣に大きな問題が生じる場合がありますので、特に自制心の弱いお子さんに対しては、親が仕組みを作る努力も必要です。
今回ご紹介するゲーム/ネット使用の家族ルールは、長期の休みに限らず、不登校の保護者カウンセリングでも紹介し、実際に効果が出ているものです。
外出自粛と不登校という違いはあれど、長期に渡り自宅から出ずに過ごすという環境やそこから生まれるストレスには共通点がありますから、似たような対策が有効であると考えられます。
・ゲーム/ネット使用のルールを話し合って作成する
ゲーム/ネット利用のルールについて家族で話し合うことは、長時間利用を防ぐだけでなく、インターネット上のコミュニケーションに関するトラブルを防止する意味でも効果的です。
ゲームやスマートフォンなどの機器を与える初めの段階で以下のように伝えて話し合いをしてください。。
「このゲームは、本人のお小遣いで買ったものでも、元は親のお金です。使用するためのルールを親と一緒に決めましょう」
既にルールなしに使用している場合は、なるべく早くルールについての話し合いを持ってください。ルールなしに好き勝手にゲーム/ネットが出来る環境は依存状態を作りやすいと言えます。
ルールを作る際には親が一方的に押し付けるのではなく、子どもの希望も聞きつつ決めていくことが大切です。
ゲームや動画サイトが害悪だからダメ、というスタンスでは子どもが反発し、嘘をついたり隠れて使ったりするようになりますので、あくまで「長時間利用の制限」「使っていい時間帯や場所」について、子どもも納得する形に協議する姿勢を忘れないでくださいね。
・ルールは紙に書いて見える形にする
言葉だけのルールは、後で「言った、言わない」のケンカの元になります。話し合って決めたルールは、契約書として目に見える形にして、子ども本人に署名してもらいましょう。
ルール作り3つのポイント
ルール作りの際に大切な3つのポイントとルールの具体例をご紹介します。繰り返しになりますが、親が一方的に決めるのではなく、あくまでも本人と話し合い、お互いに納得できるルールを作りましょう。
@nifyの”「子どもとインターネット」安全ガイド” のサイトから家族ルールのひな型をダウンロードすることができます。
ポイント1 時間管理のルール
長期休暇中は自由に時間を使えるため、ゲーム/ネットの時間が増えてしまいがちです。更に依存になってしまうと昼夜逆転の心配もあります。ゲーム/ネット依存症を防ぐために時間のルールを決めましょう。
・21時以降は電源を切る(親が回収する)
・自分の部屋にケータイ・スマホを持ち込まない
・自由に使用できる時間を制限する
特にこのルールは、休校中や不登校の子どもには大切です。普段学校に行っている時間帯には、学校でできないことは自宅でも制限しましょう。具体的には「平日の16時までは、ゲームは禁止、ネットもアクセスできるサイトを制限する」などです。
ポイント2 コミュニケーションのためのルール
オンラインのコミュニケーションでは、ついつい攻撃的になったり、一方的になってしまったりで、対面のコミュニケーションよりもトラブルになりやすい傾向があります。ネットは学校や駅、道路と同じ公共の空間であることを教え、そこで話していることは他人からも見聞きできると理解させてください。そしてSNSでは他人や親に見られても大丈夫な内容を書くように伝えましょう。
またリアルのコミュニケーションが減ってしまわないように、家族で一緒に食卓を囲むなど、顔を合わせて話す機会も大切にしましょう。
・食事中はネット/ゲームはしない。家族とコミュニケーションを優先する
・うわさ話や悪口など自分が言われたら嫌だと思うことは書かない
・知らない人とのコミュニケーションでは、個人情報を書かない
・ゲーム中には人が聞いて不快な言葉を使わない
ポイント3 ルールを守れなかったときの対応を決めておく
ADHDの子どもは、ついつい自分の欲求を抑えられずに、一度は自分が納得したルールでも破ってしまうことがあります。その際には、淡々と「これは約束したことだから」と伝え、あらかじめ決めてあった制限を課しましょう。いくら子どもが不満を言ってきても、そこで折れてしまっては、ルールを決めた意味がありません。ここが正念場です。断固ルールを守りましょう。
・ルールを守れなかった時、何が悪かったのか話し合う
・それでも守れなかった時の制限を決める
例)3日間利用禁止で親が預かる
・ルール破りを繰り返した場合は、より長期間の禁止とする
「永久に禁止」など重すぎるペナルティを設定すると、親の方が罪悪感を覚えて行使できない場合や、子どもが親への不信を生じる場合がありますので、軽めの罰則にする方がよいと思います。
今すぐ子どもに見せられる、休校中に便利なサイトやサービス
ルール作りをしっかりして、上手く使うことができれば、インターネットは大変便利なものです。今回の休校への対策として多くの企業・団体が子どもたちに役立つサービスの無料開放をしてくれています。その中から気になるサービスをご紹介します。大人の自分がみても興味深そうなサイトが多くありました。
特に文部科学省と経済産業省のサイトに多くの情報がまとめられています。
・文部科学省
臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト(子供の学び応援サイト)
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/index_00001.htm
・経済産業省
新型コロナ感染症による学校休業対策『#学びを止めない未来の教室』
https://www.learning-innovation.go.jp/covid_19/?t=5
学習サポート系
〇「やさしくまるごと小学」小学生向け
シリーズ授業動画
https://gakken-ep.jp/extra/yasamaru_shogaku_mov/
〇「ひとつひとつわかりやすく。」中学生向け
シリーズ授業動画
https://gakken-ep.jp/extra/hitotsu_mov/
学研の提供している映像授業、単元別に細かく分けられています。
eboard(イーボード)は、約2,500本の映像授業と7,000問以上のデジタルドリルで学習ができるオンライン学習教材です。OSやブラウザを問わず、教室やご家庭からご利用できます。個人や公立学校、非営利団体では無償でのご利用が可能です。
NHKは、子どもたちの家庭の「学び」を応援します!特設ページ「おうちで学ぼう!」では、全国各地の先生や専門家とともに考えた、NHK for Schoolの家庭での効果的な使い方や、今だからこそ見てもらいたい“おすすめの番組や動画”を、学年ごとに紹介いしていきます。 番組を見て、楽しく学びましょう!
プログラミング系
【一般社団法人ツクル】
プログラミングクエストは沖縄女子短期大学との共同研究により、効果的な動画学習を目指して開発された学習教材です。パソコンに慣れ親しむ、プログラミングの仕組みを知るということをコンセプトに、3年半でのべ1万人が体験しました。小中高の学生や教員の方にも研修で用いられ、大人から子供まで楽しみながらプログラミング学習をすすめることが出来ます。
科学系
休校中の子供たちにぜひ見て欲しい!科学技術の面白デジタルコンテンツ。家庭で長い時間を過ごす子供達のために、全国の大学・研究機関の広報担当者有志(科学技術広報研究会《JACST》)が、自身が所属する研究機関のデジタルコンテンツの中から子供たちにぜひ見て欲しいと思う作品を集めたサイトを開設しました。この機会にぜひ、研究の最先端にふれてください!
歴史漫画系
発売以降、37年間ずっと愛され続け、2020年にはついに累計2020万部を突破した、日本で最も売れている学習まんがです。各巻各章に迫力ある「パノラマ大画面」を使って当時の生活や文化、合戦などの様子を再現。カラーページも多く各時代の様子をリアルに体感できます。
https://kids-km3.shogakukan.co.jp/
こうした無料公開されている教材を上手に使うことで、ゲームやYoutubeに頼りすぎず、家から出られないストレスを緩和したり、自宅学習を進めたりすることができます。暇だからといって無制限にゲームを許していては、あっという間に生活習慣が乱れ、ゲーム障害へのきっかけとなるかもしれません。お伝えしたヒントをもとに、家族でゲームやネットとの付き合い方を考えてみてくださいね。
もしお子さんがゲームやネットと上手く距離を取ることができず、生活に支障をきたしているようなことがあれば、いつでもご相談ください。家族ルールの作り方や話し合いの進め方についてもアドバイスいたします。
またお子さんが既にゲーム障害の状態になってしまっている場合は、なるべく早く専門家に相談することをお勧めします。早い介入が、早い解決のカギとなるでしょう。
この記事のまとめ
・休校中や長期休暇中はゲーム/ネットを使用する機会が増える
・ADHDの子どもはゲーム/ネット依存になりやすい
・ゲーム/ネット依存を予防するためには、使用のためのルール作りが大切
・ルール作りでは、「時間の管理」「コミュニケーション」「ルールを破ったときの制限」のポイントをおさえる
・休校中はネットを有効活用して、学びを深めよう