最新のトラウマへのアプローチ 内的家族システム療法Internal Family Systems Modelとは

足立区北千住の「カウンセリングルームすのわ」カウンセラーの南です。

今週末に内的家族システム療法 Internal Family Systems Model(IFS)という心理療法の紹介講座を受講してきました。このIFSはトラウマの治療法として、トラウマ治療の先進国であるアメリカでとても注目されている治療法です。

内的家族システム イブニングトーク&2日間入門講座に参加しました。

この治療法については、数年前から学びたいと思いつつ、日本では研修の機会がなく、心待ちにしていた研修でした。まだまだ日本語の文献は少ないのですが、

「身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法」

著者べッセル・ヴァン・デア・コーク

で取り上げられています。

ただ本を読んだだけではよくわからない、というのが正直なところの感想でした。

今回、2日間の講座でエッセンスについて体験的に学ぶことができたので少しだけご紹介します。

まず「人の心の中には様々なパーツがあり、そのパーツ同士が一つのシステムのように相互に影響しあって、人の心を作っている」と考えています。

例えば今このブログを書いている南の心の中にも、一部のパーツは「学んだことを多くの人に早く知ってもらいたい」と考えています。一方別のパートは、「部分的な情報を伝えてもうまく伝わらないのではないか?批判などされたらどうしよう」また別のパートは、「ほどほどにして早く寝ないと明日が大変だ」と言っています。

このように人の中には、いろんなパートがあって、それがそれぞれに影響しあっているのが常なのです。

・それら人の内部にある全てのパーツには価値があり、システムであるその人にとって、肯定的な役割を果たすために存在しています。

カウンセリングに来る方の中には、自分の中のパーツに対して扱いに困っていたり、そのパーツを症状として考えている場合も多くあります。例えば、摂食障害で食べ吐きを繰り返すパーツ、自分のダメなところを常にダメ出しするパーツ、ちょっとしたことで怒ったり・落ち込んだり・悲しんだりの感情を爆発させてしまうパーツ、これらのパーツは実際に厄介な存在に見えます。

IFSではそのようなパーツに対しても”すべてのパーツは大歓迎です”というスタンスでカウンセリングを進めます。そのスタンスは初めから終わりまで全てにおいて徹底して貫かれます。

・すべての人の中には、Self(セルフ)のエネルギーが生まれた時からあります。このSelfは、落ち着き、明晰、好奇心、創造性、自信、勇気、思いやり、つながりの性質を持っています。

このSelf(セルフ)の概念が、IFSの中心的な要素の一つです。もちろんカウンセリングに来た時には、その人の中のSelf(セルフ)の部分は、そのほかのパーツによって覆い隠されて見えなくなっていることがほどんどだと思います。カウンセリングをしていくか中で、少しずつその人の中の落ち着き、明晰、好奇心、創造性、自信、勇気、思いやり、つながりの部分が階層的に出てこれるように、カウンセラーが関わっていくわけです。今回の講座の中はでデモセッションが複数あり、クライアントの中でSelf(セルフ)が出てくると、パッと顔が緩んだり、明るくなったり、子どものような遊び心が出てきたりと、見ていてその変化が良く分かりました。

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・パーツの中にいる追放者(エグザイル)は、過去のトラウマ的な体験の中で傷つき、その人のシステムの中で意識の外に追いやれています。その追放者が抱えている、過去の重荷を下ろしてあげることで、癒しが起こります。

この追放者は、多くの場合幼い時に傷ついて意識の外に追いやられたまま、他のパーツからはいつもは隠されています。しかし、その幼い傷が癒えないままなので、時にその古傷が疼いてしまい、クライアントさんとしては感情的な苦しさとして体験します。例えば、幼いころに虐待的な環境で育った人の中には、複数の追放者がいて、癒されることなく、過去のトラウマに悩まされ続けてしまいます。IFSのセラピーでは、パーツに良い悪いはなく、ただその抱えている重荷があることが問題であるため、重荷を下ろすことを段階的に進めていきます。

・別のパーツとして管理者と消防士がいて、その二つは防衛者と呼ばれます。

・管理者は未来志向、努力家、心配性、批判的、完璧主義などの特徴があるパートです。日常生活をうまくやるために、追放者を隠すという意味で防衛者です。

管理者のパーツの出方として、例えばワーカホリックに働きすぎてしまう人が当てはまります。その人の中では管理者は、自分は常に頑張らないと人から見放されてしまうという傷を抱えた追放者の傷が刺激されないように、常に馬車馬のように頑張って、自分を犠牲にしてでも、努力を繰り返してしまいます。この管理者のパートも、本当の意味では、自分をいじめる意図などは全くなく、その人を守るために精一杯のことをしていると、IFSでは理解します。

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・消防士は、追放者の痛みを感じないように、痛みの消化をする役割です。

飲酒、薬物、摂食障害、ネットなどの依存症、自傷、自殺念慮、衝動性、解離などを使って、痛みを消す役割を果たします。一見するとこれの行動は、クライアントさんにとってはやめたい行動であり、問題行動として捉えられるような行動です。IFSではこれらは全て、クライアントさんのシステムの均衡を守るためのポジティブな役割があってのものだと捉えます。実際のセッションでも、丁寧にそれぞれのパーツの役割を認めて労い、コミュニケーションをとっていきます。多くの場合パートはしっかりスペースを与えられて、存在を認められることで、素直に協働してくれるようになっていきます。逆に、問題視されて無理やりに止められようとすると、システムが混乱して症状が悪化するということにもなります。

このようにIFSのセラピーは、どのパーツもそのパーツなりに、その人のことを精一杯に考えて守ろうと行動していると考えます。誰も厄介者や敵とは見なさないところが、とても素晴らしく優しいセラピーだと思いました。

講座の所々で講師のサイモン先生がトピックに関連する詩を読んでくれました。

その詩をゆっくり味合うプロセスがSelf(セルフ)を刺激して、セルフにエネルギーが溜まっていくような体験でした。

この記事でも最後に好きな詩を紹介します。

日本語と英語、そして最後にはパッチアダムスがその詩を暗唱している動画を載せておきます。

日本語を味わった後に、是非パッチの暗唱も聞いてみてください。

この詩はパッチアダムスが来日した時に、暗唱してくれた知り好きになった詩です。

Self(セルフ)の感覚に近さを感じたので紹介します。

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https://yummybuns.exblog.jp/18418849/ より引用

野鳥の詩(メアリー・オリバー作)-Wild Geese by Mary Oliver

善良でなくてもいい

膝をつき、悔恨の念にかられながら、

砂漠の中を彷徨い続けなくてもいい 

ただあなたのその柔らかな肉体が

愛するものを思いのまま愛することを

許してあげよう

あなたが体験した失望について教えてほしい

私のはなしも、あなたに聞いてほしい

私たちがそうしている間も時は止まらず 

降り注ぐ太陽も透明な雨雫も

大地を渡り

草原や森林を越え

山々と河を横断する

そして澄んだ青い空には

野鳥がまた巣に帰るため飛んでいる

あなたが誰であっても、どんなに淋しくても、

地球はあなたの想像次第

野鳥のように、甲高く心たぎるような声で、

絶えずあなたに呼びかけている

あなたが今ここに存在していることを教えてくれている

原文(Original Poem):

You do not have to be good.

You do not have to walk on your knees

for a hundred miles through the desert, repenting.

You only have to let the soft animal of your body love what it loves.

Tell me about despair, yours, and I will tell you mine.

Meanwhile the world goes on.

Meanwhile the sun and the clear pebbles of the rain

are moving across the landscapes,

over the prairies and the deep trees,

the mountains and the rivers.

Meanwhile the wild geese, high in the clean blue air,

are heading home again.

Whoever you are, no matter how lonely,

the world offers itself to your imagination,

calls to you like the wild geese, harsh and exciting–

over and over announcing your place in the family of things.

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