Q&A 病院で「発達障害グレーゾーン」と言われ、どうしていいか分かりません
こんにちは!
足立区北千住カウンセリングルームすのわ・臨床心理士の南です。
この記事は病院でADHDのグレーゾーンと言われて悩んでいる方からの質問に対してお答えする内容です。
※プライバシーに配慮し、内容は一部改変したり伏せたりしています。
☆この記事を読んで欲しい人はこんな人
・発達障害グレーゾーンとはどんな状態なのか知りたい人
・病院で発達障害グレーゾーンと言われて、どう理解してよいか悩んでいる人
昔から物忘れや、ケアレスミスが多く、これまでどの仕事も長続きせずに辞めてしまっています。
数年前から「自分がADHDではないか?」と疑いつつも、病院に行くほどではないと、受診をためらっていました。
半年前に近所のメンタルクリニックに行きました。そこでチェックリストに回答し、医師からの問診に答えた結果、「ADHDの傾向はあるが、診断基準を満たすほどではない、あなたはグレーゾーンです」と言われました。そして「薬を処方することは出来るけれど、どうしますか?」と尋ねられたのですが、薬を使うことには不安が大きいため処方箋は希望せず、それ以来クリニックには行っていません。
ADHDの診断を受けることについて、期待と不安の半々の気持ちでクリニックに行ったのですが、グレーゾーンという中途半端な答えをもらってモヤモヤしています。ADHDグレーゾーンとはどういう状態で、自分をどう理解して、対処していけばよいのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
実はカウンセラーである私も、自分がADHDのグレーゾーンであることを自覚して、生活に様々な工夫をしながら仕事や子育てをしています。病院を受診した経験もありますので、グレーゾーンの方の不安や葛藤気持ちはよく分かります。
そうした私自身の経験も踏まえ、この記事では、発達障害グレーゾーンについての説明と、グレーゾーンの方がどのように自分をとらえて、向き合っていけばよいかのヒントをお伝えします。
また、グレーゾーンの当事者が、ご家族など身近な人にこの記事を見せて、自分の状態を理解してもらう助けとなるように書いていきますね。
「発達障害グレーゾーン」って何?
「発達障害グレーゾーン」とは、発達障害の診断基準を満たさないが、発達障害の傾向を有しているという状態の俗称です。医学的な用語ではなく、正確な定義がある言葉ではありません。
近年、発達障害の概念が世間に広まったため、発達障害グレーゾーンに当たる人が、自らをグレーゾーンと自覚することが増えています。
発達障害は「どこかが悪いから手術で取り除いて治す」という病気ではありません。その人の脳の特性と周囲とのギャップによって起こるものです。
脳の特性は白と黒のように明確なものではなく、白に似た薄いグレーから黒っぽい濃いグレーまでのグラデーションです。実際には完全な白という人はおらず、逆に真っ黒な人もいません。全ての方がこの連続したグラデーションのどこかに当てはまっていると言えるでしょう。
その特性の表れ方の程度(グレーの濃さ)によって発達障害の診断基準を満たす・満たさないが決まってしまうわけですが、では基準未満ギリギリの、やや濃いグレーの人はどうしたらいいのか?という問題が起こります。
発達障害グレーゾーンは診断未満でも、困っています
グレーゾーンに当てはまる人の多くは、発達障害の診断基準を満たす人と同様の困り感を抱えています。例えば以下のようなことです。
・ケアレスミスが多い
・物忘れが多い
・片付けが苦手
・コミュニケーションが苦手
・空気を読めない
・数字が苦手
診断ありの人と比べて、ひとつひとつの苦手さの程度は小さいかもしれませんが、問題がない人に比べると、本人の努力では補い切れない困りを抱えています。
しかし診断基準に満たないと「障害」とは認められないため、そうした困り感を他人に理解してもらうことが難しく、努力不足や性格に難ありと誤解されてしまうことがあるのです。
自身のアイデンティティーがはっきりしないという悩み
そして発達障害グレーゾーンならではの悩みもあります。
グレーゾーンの方は、病院にかかっても「診断までは付けられないがADHD傾向あり、自閉症スペクトラム傾向あり」と言われることが多く、傾向があっても診断が付かないということに悩んでしまいます。
発達障害の診断ありの人は、診断が付いたことで「自分のこれまでの苦手さは、病気が原因で、努力不足ではなかったんだ」と、ホッと安心できたという感想を持つことが多いようです。
一方、グレーゾーンの人は、診断というハッキリしたものを受けられず、アイデンティティーがあやふやなまま、「障害者でもないし健常者でもない、じゃあ自分はいったいどうすればいいんだろう」という中途半端でモヤモヤとした悩みを抱えることになります。
また私自身がそうであったように、発達障害の特性がそこまで強く表れず緊急性がないため、「自分のレベルで病院に行く必要があるのだろうか?」と受診をためらっている方も多くいます。
こうした状態のままでは自力での生活改善が難しく、悩みを抱えたまま苦しい思いを続けた結果、職場でのトラブルやうつ病など別の問題へ発展する恐れもありますから、なるべく早期に心と行動の対処法を知ることが望ましいでしょう。
発達障害グレーゾーンも立派なアイデンティティーです!
「カウンセリングルームすのわ」の相談やADHD交流会の参加者でも、自らをグレーゾーンと自覚する方が増えてきました。
恐らくこの傾向は今後も続き、グレーゾーン向けの本やサービスも増えていくと思われます。
グレーゾーンとは、どっちつかずの半端な状態ではなく、立派なひとつのアイデンティティーです。「自分はADHDグレーゾーンだからケアレスミスが多いんだな。似たような人たちはどうやって解決しているのだろう」と冷静に受け入れたうえで対処していけば、たくさんの困りを緩和・軽減することができます。
そうした対処の実例を知る上で、強い味方となる当事者コミュニティの多くは、診断の有無を問わずグレーゾーンでも参加OKであるのが珍しくありません。病院での診断確定がなくても参加できる可能性は高いので、自宅や職場の近く、あるいはオンラインで開催されている当事者会や交流の場をチェックしてみてはいかがでしょうか。
もちろん当ルームが定期的に開催している「ADHD交流会」も、グレーゾーンの方が多くいらっしゃいますので、興味があればぜひご参加ください。「自分が参加してもいいかわからない…」といった不安な方も大歓迎です。
また、数は少ないですがグレーゾーンのみを対象にした当事者会もあります。
OMgray事務局が主催する「ぐれ会」は、日本初のグレーゾーンに特化した当事者会です。こうした動きが広がることにも期待したいですね。
https://smart.reservestock.jp/menu/profile/23160
世間の受け入れや理解は不十分、公的な支援は期待できない
グレーゾーンを理解して自身の心の状態を自覚することは、日常生活の困りごとに対処する上で大いに役立ちます。しかし、職場など周囲から十分な理解を期待することは、まだまだ難しいのが現状です。
また医学的には発達障害での診断が付かないので、障害者手帳を取得したり、障害者枠で就労したりといった公的な支援を受けることができません。
そのため自身の特性を理解したうえでの、自助努力が必要です。
グレーゾーンの特性自体は発達障害の特性とほぼ同じで、違いは主に「程度」であることが多いですから、発達障害についての対策をそのまま活用することができます。
もし、対策そのものが分からない、分かってはいるが実行できない、といったことでお困りでしたら、カウンセリングを受けながら困りに合わせた対策を学ぶこともお勧めです。
カウンセリングルームすのわでは、グレーゾーンの方が生きやすくなるためのお手伝いもしています。悩みや不安を誰かに話すだけでも気持ちがスッと軽くなるものです。いつでも遠慮なくお問い合わせください。お待ちしています。
この記事のまとめ
・発達障害グレーゾーンとは発達障害の診断基準を満たさないが、発達障害の傾向を有しているという状態
・発達障害グレーゾーンを一つのアイデンティティとして受け入れる
・発達障害グレーゾーンの特性を理解したうえで、自助努力が大切
・自助努力としては、発達障害への対策が有効